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ある地方の木造防音室(ピアノ室)2019.07.06 Saturday
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昨日、契約案件の資料を整理していたら、ある地方のプロピアニストの防音室の見積書がでてきました。
*地元の施工業者のものです。
このピアノ防音室(ちょっと古い木造住宅)は、既存家屋の天井と床を解体し、窓を一つ潰して防音壁にする前提の工事でした。
*私の提案書に変更して無事に所定の防音性能D-60以上を確保できた現場です。
地元の工務店の見積書は3社見積りの中で最も安かったので、この業者が他のリフォーム工事と一緒に契約したものでした。
約8帖の洋室をピアノ防音室にリフォームするものですが、防音工事費用の見積り額は約330万円です。
これは東京では安い方ですが、驚いたことに「ある東京のメーカーの防音材と設計」をそのまま適用したもので、A防音レベルでD-40〜D-45性能と表示されていました。
*S防音ではD-50レベルで、金額が500万円以上になるもの。
依頼者の条件では予算が300万円以内で、D-60以上という希望でしたので、上記の建築会社では無理だという事で、東京の専門業者を探して、防音職人のホームサイトを見て、東京まで相談にお出でになったのです。
しかも施工業者の提案内容を見ると壁と天井の防音施工しか計上されていないのです。
ご予算的にはかなり厳しいですが、色々と工夫して税別約280万円に納めました。
*施工業者の協力で吸音材の一部と天井の吸音化粧板、床の杉板フローリングは格安で提供するという条件でした。
*私の取扱い防音材の送料が値上がりする前でしたので、設計図と一緒に、なんとか防音材も無事納品できました。
とにかく、東京の大手防音室メーカーや防音材メーカーは、とても防音設計を理解しているとは思えないお粗末なものです。
自社の製品を売ることが目的であり、代理店から手数料をもらうシステムなので割高であり、防音レベルもダメです。
費用対効果が低いだけでなく、ピアノの固体音や音響を無視しています。
依頼する方にも自己責任のある業界ですが、大きな看板はなんの役にも立たないことが分かりました。
とくに木造防音室は専門業者が少なすぎます。
*参考ページ:木造防音室(在来工法の事例)
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木造防音室の専門家の見分け方2019.06.22 Saturday
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防音対策の専門家の見分け方の一つをご紹介します。これは木造建築全般の共通事項です。
新築住宅や改修を伴う木造において、たとえば防音室および生活防音を依頼する場合、吸音材を軽視する専門業者は専門家ではありません。おそらく自社の遮音パネルなど既製品の遮音材、石膏ボードを重ねる対策にシフトする提案をすると思います。
木造に限らず、防音対策に使用する吸音材について具体的な効果や概要を説明できない設計者は専門家とは言えません。
また、グラスウールだけで防音設計を行う業者は知識や工法が古すぎます。
幅5センチから10センチ程度の壁内などの空間は隙間なく吸音材を充填することが効果的であり、幅広い周波数帯に対応する防音効果を考える場合は、ロックウールやポリエステルウールを使用します。
*厚みや密度も重要です。
通常の木造防音室では限られた空間を活用するため、天井裏や壁内、床下に吸音材を充填します。
そのうえで必要な遮音材、制振材などを組み合わせて設計します。
そうすれば新築設計の場合、過剰な防音壁や天井・床下の改造は不要になります。新築業者に予め下地補強や吸音材充填をしてもらえば、比較的薄い防音構造を追加するだけでピアノなどの防音室ができます。
さらに、防音対策の音に対する周波数特性を考慮しない設計は、防音設計とは言えません。
以上の諸点を専門業者に質問すれば、専門家を判別できると思います。
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木造軸組在来工法のピアノ防音室2019.01.19 Saturday
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ピアノ防音室の業界は、最も無駄な工事が多く、割高であることが有名です。
なかでも、木造新築住宅を無駄に改造して、大幅に狭くする工法で防音工事をする建築会社が増えています。
*要するに大元のノウハウが同じため、同様の設計・施工を行うという金太郎飴のような断面です。
しかも、新築木造の天井・内装壁・床下を解体したうえで、非常に狭くする工法の意味が分かりません。
*既存の換気・通気を遮断する工法を併用しているので、木造の寿命は通常の木造住宅などに比べて短くなります。
主な概要を抜粋すると、次のようになります。
・床下を解体してコンクリート床を増設し、換気を遮断する→換気を遮断すると木造の寿命は短くなる
・天井や壁を解体して軽量鉄骨軸組に改造し、天井を大幅に下げ、壁を大幅に厚くして部屋を狭くする→小規模な部屋だとピアノ配置に自由度がなくなる。家具が置けない。音響が悪化する。
・床材に無垢のフローリングを施工すると床鳴り、がたつきなど、通気遮断、コンクリートの湿気による弊害が出る
無垢材を含めた木造そのものがピアノ防音室の最大の音響上のウリなのに、その特長をすべて台無しにする工事と言えます。
約6帖で税別300万円以上の金額になり、とくにプロの音楽家やピアニストには到底受け入れることができない仕様です。
遮音性能も大半の業者がD45〜D50レベルですので、これではDIYで防音材を重ねて施工したほうがベターです。
*専門業者とは、大半が木造の利点・特長を理解していません。
木造在来工法は、最もピアノ室にマッチした構造です。くれぐれも長所を台無しにするような提案を受け入れないようにご注意ください。ちなみに「在来木造は豊かな音色が響く楽器」と呼ばれます。
それが多くのプロが好む所以です。予算が許せば、床には無垢材を使用したいです。
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固体伝播音対策を疎かにした防音室の事例2017.09.07 Thursday
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この防音室は、比較的古いマンションを改修して構築したものです。躯体の厚さは壁が約150ミリ、床が約110〜120ミリです。
(防音職人が無料相談でヒアリングして資料をいただいたものです。その後、DIY提案で床の振動音を大幅に改善しました)
*国立でご相談をお受けした事例(ピアノ室)です。
施工前の想定遮音性能はD-35〜40で、施工後の防音室の遮音性能はD-45〜50でした。
・天井、界壁、床の内装をすべて剥してから、躯体に直接軸組を固定している。
・軸組の空洞部に厚さ50ミリ程度のグラスウールを充てんする。
・下地に厚さ12ミリ程度の合板を張り、そのうえに遮音パネルを重ねて張る。
という基本構造でした。
結果は、空気を伝わる音は、ある程度遮断できていますが、振動音など固体伝播音が階下などに響き渡り、ほとんど遮断できていない状況です。
その原因は、軸組下地が絶縁されていないことと、制振材が全く使用されていないことでした。
遮音材にシフトした防音構造であり、吸音材の厚さも薄く、遮音パネルの性能だけに依存したものです。
固体伝播音の遮音対策を疎かにした事例と言えるでしょう。
上記の仕様を考案した大手業者は、ある遮音パネルのメーカーの代理店のようで、提携会社の製品を使うことが防音工事の前提となっています。
代理店方式の防音室は自由度がなく、仕様を変更したり改善することができません。
実は上記の防音構造は約10年前から現在まで同様な工法が実施されているようです。
皆さんがご存知の大手防音工事会社+大手防音室メーカーが一緒に現場で造っている防音室の基本システムが、これです。
*遮音性能レベルに応じて防音構造を厚くするものですが、固体伝播音は余り遮断できません。
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木造住宅の防音室の費用対効果2017.08.18 Friday
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大手住宅メーカーなどの音響・防音仕様を見ると、大半が遮音材にシフトした過重量な対策です。
その割には、隙間から遮音欠損したり、固体伝播音(ピアノやチェロなどの振動音)が住宅内だけでなく、戸外に大幅に漏れたりします。
費用対効果から見れば、かなり無駄があるアンバランスな設計・施工です。
厚さ20センチ以上の防音界壁からの音漏れの現状を見ると、天井付近や床下から音漏れしていたり、壁内部の吸音材の性能不足によって防音効果が低い防音室もあります。
これらは、みな木造住宅の構造的な弱点や利点をあまり考慮しないで設計することや、施工要領が間違っている現場もあります。
大手住宅メーカーは施工を担当する代理店や下請けに丸投げに近く、現場でのチェックや指導をしていません。あくまで金太郎飴のような設計図を渡して防音工事を進めるだけです。
木造住宅の音楽室など防音室の費用対効果や耐久性は、木造の特性を生かすことで高まるものです。
既製品を単純に張り付ければ実現できるものではなく、快適な音響も木製品を重視することで得られます。
間違っても鉛パネルやALCで防音室を造ってはだめです。
木造建築の音響・防音設計のマニュアルが存在しない、既製品の費用対効果が低いなど業界全体の問題がある中で、木造住宅の防音室は高い買い物になっているようです。
*参考:木造住宅・防音室の事例
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ピアノ防音室(木造住宅)の無謀な工法2017.03.18 Saturday
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最近、木造防音室の相談を受けて提案をしましたが、他の専門業者との価格競争などに無理があったようです。
他の専門業者は床のコンクリート増設や分厚いガラスサッシュの2重施工によって防音室を造る計画が多いようです。
*同じ性能のサッシュを2重にしても共振する周波数帯が生じるため、効果は半減しますので費用対効果が低くなります。
私のほうは遮音タイプのサッシュと気密性の高い樹脂サッシュを2重施工することを提案しましたが、受け入れられず保留になりました。理解してもらえない相談者には、いくら説明しても時間と労力の無駄になりますので保留にさせていただきました。
音響を重視した無垢材の仕様や耐震補強などを加えて、在来工法の木造住宅の寿命を延ばすことを総合的に提案しました。
私としては提案には悔いはありませんので、提案が了解されないのは結果論ですから仕方ないです。
ちなみに、コンクリート床を増設して、すぐに防音工事を行う日程や工法ですと、木部が湿気で腐りやすくなり、換気口をつぶした場合は、さらにリスクが大きくなります。
コンクリートは施工後約4年ぐらいは水分を発生し続けますので、絶えず床などに湿気がたまることになります。
ピアノ防音室の場合は、湿気はピアノ自体にも悪影響が出ます。とてもプロが使用する環境ではありません。
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既製の防音室の欠点2016.04.20 Wednesday
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最近、既製のボックス型防音室や、部屋の中に分厚い構造の防音室を構築する工法について相談を受けました。
また、昨年は先日の記事でも触れましたように、約6帖のマンションの一室に構築した大手業者の防音室が、階下などに大幅に音漏れするご相談をお受けしてDIYによる対策で救済しました。
この大手メーカーの防音室の欠陥と言える構造の分析を取引先の専門建築士(スタジオ防音)に依頼しまとめました。浮き床構造と説明されているコマのように設置してベースパネルを固定する防音室の床などの問題です。
・コマのように設置する防振ゴムが、防音室の耐荷重(局部的にコマにかかる重量)を考慮して非常に硬いゴムで出来ている。
そのため、振動音など固体音のうち、重低音がほぼ素通りに近い状況で階下に伝わる。(ピンポイントに荷重や衝撃がかかる構造はマンション二重床と同様の弱点)
*先日説明した被害者の防音室のような状況になる。
・ベースパネルが低い音をほとんど遮断できない素材で重低音に弱い構造である。
・壁についても重低音が遮断できずに音が伝わる。
以上のように、重低音など固体伝播音に対する遮断性能が乏しく、その結果、マンションの隣室や階下に重低音が響き渡るという状況になるわけです。設計手法・製品の構造的な問題が大きいという結論です。
我々「防音職人チーム(提携先含む)」は、大手メーカー防音室を反面教師として、新しい音響・防音設計手法を開発し、10年以上前から問題をクリアしています。
しかも大手専門業者の約半分の厚さで防音構造を構築しています。古くて新しい問題と言えそうです。
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防音室のまとめ記事(木造・マンション)2016.03.17 Thursday
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防音職人が担当したピアノ・ヴァイオリン・オーディオなどの防音室の現場実例のほか、相談者に対するコンサルティング(DIYを含む)案件に関する記事をご紹介することにより、木造・マンションの防音室の留意点、基本的な概要をお伝えすることにしました。
1つの投稿記事で概要をすべて網羅することはできませんので、主な音響・防音事例のリンクを記載します。
*随時、リンクを追加して更新します。
*参考:マンション壁の騒音伝播(建築士も被害者となったケース)
■木造防音室の事例
既往の防音室から最近の音響・防音に関する技術革新まで採りあげます。
・新しい音響・防音設計:41ミリの防音施工でD-50防音室を実現
・技術革新:新しい防音設計と業界への警鐘
・主に木造住宅:楽器防音室の事例
・ピアノ教室の事例:アップライトピアノとグランドピアノ防音室(木造)
・リトミック及びピアノ教室:夜間遅く演奏ができるピアノ防音室
・プロ仕様の防音室:D-60以上のピアノ防音室(戸建住宅)
■マンション防音室の事例
防音対策(DIYを含む)の基本的内容から警鐘を鳴らすべき事例まで幅広く採りあげます。
・分譲マンション:小部屋のヴァイオリン防音室
・相談案件:ピアノ防音室のコンサルティング(マンション)
・DIY:マンションピアノ室の床防音
■音響・防音対策の実践的留意点
防音室に共通した豆知識をご紹介します。
・音響及び防音計画:ヴァイオリン防音室の考え方
・木造及びマンション:ピアノ防音室の考え方
・音響および遮音対策:防音設計の基本
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