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木造住宅と音楽室の防音対策(2021年総括)2021.12.07 Tuesday
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今年は、新築木造住宅の防音対策の相談が多かった印象があります。
大別すると、「木造防音室(主に楽器・オーディオ)」「住宅の生活防音(主に戸外からの騒音対策)」になりますが、前者は自分が出す音が戸外に漏れるのをできる限り小さくすること、後者は戸外からの車や近所の生活音が聴こえないようにすることを目的とした対策です。
手法は、防音工事によるもの、施主のDIYによるものがあり、使用する防音材は共通していますが、新築の場合は、これに壁や床下内部に入れる吸音材が重要な役割を持っています。
問合せの最初の段階は、提案書の検討と概算見積になりますが、最初から無料相談に拘る人の大半は連絡が途絶えました。
一生の買い物を、無料相談で済ませようとする価値観そのものが、防音設計の理念と合いません。
しかも、新築の場合は、新築の施工業者の設計や工事計画に間に合うように準備しないければ実現できませんので、無料相談で時間ばかり浪費する人は、結局、目標を達成することができずに消えていきます。
一方、最初から契約を前提に提案書(防音計画など)と見積検討に前向きに取組んだ案件は、大半が契約となり、契約現場の約8割が11月までに完成し、残りの約2割の現場は、来年(2022年)の春以降に着工する予定になりました。
要するに施主(依頼者)の考え方と努力によって決まるのです。
完成した新築住宅や木造防音室は、当初の目標を達成することが出来、無事に入居されています。
*参考記事:防音職人note
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木造住宅の車騒音の防音対策2021.02.23 Tuesday
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近年の木造住宅(戸建、アパート、店舗併用)への戸外からの車騒音、近所の声・犬の鳴き声を防音したいというリクエスト相談を受けることがあります。
大半が先に窓に内窓を付けても余り効果がないということを最初に言われます。これは窓業者の誇大広告にも責任があります。
まず、住宅内部への騒音の侵入経路はなにかということを考える必要があります。昔の木造住宅は窓と床下が弱点でしたが、最近の木造住宅は窓だけでなく壁面そのものが弱点になっています。それと給気口や24時間換気扇からも音が侵入してきます。
*床下は基礎パッキンから音漏れします。昔の住宅は床下換気口から音が漏れていましたが、壁面は最近の住宅よりも遮音性がありました。
結論から言うと、低周波騒音以外の騒音は、窓と壁面を防音すると大幅に減少します。24時間換気扇も防音タイプに交換すると効果的です。
木造住宅の防音対策において、窓だけ防音することを提案する業者は素人です。住宅の防音設計の知識そのものがないことを示しています。
繰り返しますが、木造住宅の防音対策の優先は「窓と壁」です。次に24時間換気扇、床の順です。もちろん、1階の場合は壁・窓と一緒に床面や天井も防音施工することがベストですが、予算には限りがありますので、優先順位を整理する必要があります。
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木造在来工法と固体伝播音2020.07.22 Wednesday
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木造住宅など木造軸組在来工法について誤解されたり、デタラメの情報を「防音対策の特徴」と称して発信している情報サイトがあります。これは看過できない内容です。
*木造は固体伝播音を伝えやすい構造ではありません。
*自社の工事を勧めるための誤った情報を発信している業者は「木造防音の専門家」ではありません。
基本的に固体音を伝えやすい素材はコンクリート・鉄・石膏ボード・ALCなどが有り、木材はこれらに比べると響きは柔らかく、音が伝わるスピードも少し遅くなる性質があります。
したがって、木造は剛性補強を適正に行えば、重量音も軽量音も軽減できる構造であり、コンクリートや鉄骨造は内装に個体伝播音を軽減する構造を構築しないと、生活音でさえ響きやすくなります。
建物の躯体構造の剛性が高いと、重量衝撃音を抑えることが出来るのは、木造・コンクリート造・鉄骨構造すべてに共通したことです。軽量音は鉄・コンクリート・石膏ボード・ALCなど硬い素材において瞬時に伝わる特性を持っています。
逆に、コンクリート・鉄骨造でも、柱・梁の断面が小さくて、スパンが長くなると、たわみやすくなり、重量衝撃音(固体音)が非常に伝わりやすくなりますので設計の際には注意が必要です。
同様に木造でも、軸組の強度や面材の補強を疎かにすると、重量衝撃音(足音など)が目立つようになり、生活騒音として悩むことになります。要するに、どんな構造でも弱点があるので、それをカバーするような設計・施工は必要なのです。
木造軸組在来工法の利点は、構造的補強やリフォーム・改修が比較的容易なので、費用対効果や予算に応じて計画できることです。木造在来工法は部材など部分的な交換や軸組の改修補強がやりやすいのが特長の一つです。
なお、ツーバイ工法は軸組在来工法に比べて、床・壁が共振しやすい構造ですので、建物用途や間取りに留意するとともに、生活防音の仕様を別途用意しておかなければなりません。
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木造防音と吸音材・工法2020.05.12 Tuesday
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木造住宅の工法は「ツーバイ工法」と「軸組み在来工法」に大別されます。前者はプラットフォーム工法とも呼ばれ、床のベースパネルの上に壁を構築する工法のため、リフォームなどの際に床を丸ごと解体すると壁も壊れるなど制約があります。
防音対策上の大きな相違点は、前者は壁と床が共振しやすく、新築時においても床下や壁のパネル内部に吸音材を入れるのが難しいため、防音効果を向上させるには、新たに防音壁をふかして二重構造にしなければならないという事です。
その分、防音構造が厚くなります。
それに対して、軸組在来工法は、新築時でもリフォームでも壁や床下内部に吸音材を入れるのは比較的容易です。このため、比較的薄い防音構造でも同等以上の遮音性能を確保できます。
また、軸組在来工法は間取り変更や構造的な補強が施しやすいため、リフォームによる防音対策が比較的容易です。
以上の点を考慮して生活防音を重視する場合は、工法上の制約を理解した上で新築計画やリフォーム計画を検討する必要があります。
なお、1階床の構造的補強は、隣室に床下点検口があればもぐって床の束増設が出来ますので、ツーバイ工法でも可能です。
木造住宅は、いずれの工法も床下換気や外壁内の通気は、建物寿命を伸ばすために重要であり、木造の構造的特徴を活かすことが、防音工事においても不可欠です。
通気・換気機能を確保した上で、防音構造を構築できるのが木造の特長であると言えると思います。
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木造の防音設計技術2019.11.30 Saturday
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木造住宅や木造防音室(音楽教室含む)の設計技術は特殊であると言われます。
特に地方の建築会社の建築士や取引先の建材業者などにそう言われます。音楽教室の先生には木造軸組在来工法がピアノ室としては最適であるが、音響・防音設計ができる専門家が居ないとまで言われました。
私の技術は少し特殊なため、提携先の木造建築業者にも理解できないところが多々あるので、安易に真似できないと評価されました。しかも、使用する防音材の選定が難しくて、費用対効果の高い材料を選ぶこと自体がハードルが高いと。
ですが、私のホームサイト「防音職人」の知名度は低く、契約者の多くがホームページそのものを見つけるのに時間がかかると言われます。
これは私の努力が足りないのか微妙なところですが、競合する建築業者が増えれば埋没しやすくなるのは、ある程度は仕方ないことだと思います。
私には提携先の木造施工業者以外に、特定の業務提携先は存在しないので、ウェブサイトなどのネットワークは小さく、他の専門業者に比べて宣伝力は弱いです。
しかしながら、元契約者の紹介やリピーターの案件は毎年のようにあり、このような方々の協力で、なんとか本業の防音設計を行うことが出来る事を感謝しています。
私のホームページは、文章が多くて、理解するのに時間がかかるのが難点ですが、伝えたいことが沢山あり、あのようなウェブサイトになりました。
どうしても、主なコンテンツを早く読みたいとお考えになる人は次のページをご覧ください。重要なコンテンツに比較的早くアクセスできると思います。
これでも多すぎるという人は、「防音設計の基本」「役立つ防音メモ」だけでも、じっくりとお読みいただければ幸いです。
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ある建築士に木造防音を依頼されました2019.04.24 Wednesday
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ある地方の建築事務所(自営)の建築士に木造共同住宅と木造テナント(事務所など)における界壁、床の防音構造に関する有料コンサルティングを依頼されました。
他の事例と併せて見ると、彼らの知識は非常に古い物であることと、大手建材メーカーの製品そのものを鵜呑みにしていることが分かりました。
例えば、遮音パネルが現場での防音材と建材の組合せ施工よりも効果が高いと誤認したり、吸音材そのものをセルロースファイバーやグラスウールの断熱材しか知らないため、ロックウールの選択そのものが欠落しています。
一般的な建材にしても、床面にALCやセメント板など固体音(足音や落下物などの音)を伝えやすい製品を使おうとします。
これは重ければ、どんな音でも遮音できると思い込んでいることが原因です。
既製品の遮音ゴムにしても安くなく費用対効果が低いことを実例を持って、建築士に例示しました。
また実例として、私の木造防音モデルの一部を特別に渡して、個人的に研究を進めるように伝えました。
世の中の事例情報は古すぎたり、遮音シート・パネルのように費用対効果が低すぎるものが多いです。
その仕組みは解説すると建築士なら直ぐに理解できます。
*コロンブスの卵と同じで、言われてみればなるほどということになります。
そもそも、遮音ゴムだけで全ての防音対策が出来ると考える事自体がすでに時代遅れです。
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木造新築住宅の防音対策2018.11.13 Tuesday
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木造住宅の防音記事を検索すると、大半が窓の対策が重要と述べています。
ところが、内窓を付けて約D-40(遮音性能)にするのはいいのですが、相談者の多くは壁から音が漏れている(戸外の騒音が入ってくる)と言います。
*窓だけ対策すれば大丈夫と言うのは、素人の業者または窓業者だけです。
新築住宅は内窓は後付できますので、優先すべきは壁や24時間換気扇です。
24時間換気扇は、防音フードを新築の際に取付けておくと、15dB程度遮音性能がアップしますので、お勧めです。
壁が面積的に最も大きいので、新築時の防音対策は24時間換気扇と併せて「外壁側の内装壁の防音」が木造住宅にとっては最も重要です。
最近の住宅は、壁の遮音性能はD-25〜D-35しかありませんので、少なくともD-40以上になるようにすることが望ましいです。
対策としては
*発泡材の断熱材は使わない。
*ALCパネルはジョイントが弱点になるので使わない。
*石膏ボードだけでなく合板を併用する。
などの基本的な仕様を見直すだけで、遮音性能がD-40以上になります。
ここまで施工しておけば、防音室を後付でリフォームするのも、比較的容易になります。
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木造建物の防音設計2018.08.20 Monday
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防音職人へ相談される案件は、大別して「木造住宅の生活防音」「木造防音室」の2つが主なものです。
マンションの防音設計も並行して行っていますが、私の手が回らないことと、職人が2名になってしまったので物理的に木造防音と同時並行は無理なのです。
自分の身の丈ほどの小規模な案件を中心に取り組んでいましたら、いつの間にか個人の音楽家や音楽教室(ピアノ、ヴァイオリン、小楽団、和楽器)の先生からの依頼が多くなりました。
大手の専門業者は予算的にも合わないことがあり、余計にコンパクトな薄い防音設計を要望されることが増えてきました。
木造は「適度に音を吸収して反響させるという性質」「改造しやすい可変性に富む」という特長をどう生かして設計・施工するかということが重要です。
*木材そのものが音響上のメリットがある
*可変性は比較的容易に構造的な補強が出来るので、剛性・制振性および耐久性を強化できる
しかしながら、予算には限りがありますので、費用対効果と空間を狭くしない音響・防音設計が木造には求められています。
使用する防音材の性能が高くないと薄い構造は構築できません。
*薄い防音構造=安い構造 ではありません。
この点を勘違いしないように依頼されることを希望いたします。
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ハウスメーカーの防音構造2018.07.01 Sunday
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この説明図は一般的なハウスメーカーの外壁の防音構造です。戸外の騒音が70dBとすると、この仕様で施工すると室内には30dBの騒音しか侵入しないという想定です。壁の遮音性能(透過損失)はD-40という表示になります。
しかし、この説明図の仕様ではD-40は無理だと思います。図中の外壁材はサイディングで厚さ15ミリ、空気層という表示は実は通気胴縁を指し、空気の流れる隙間です。この薄い隙間では音は減衰しません。
また、グラスウールを断熱材として壁の内部に入れても、低音と高音は筒抜けになります。
同じく石膏ボードも同様の周波数特性を持っており、低音と高音の周波数帯が弱点です。これは重ねて施工しても殆どその傾向は変わりません。
上記の仕様を実際に施工した現場で計測すると、概ねD-30〜35になります。
どうしたら、改善できるのかということですが、内装側に石膏ボードと特性の異なる材や防音材を重ねて施工するのが簡単です。
わずか15ミリの追加でD-40以上を確保できると思います。
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木造新築住宅の防音対策留意点2018.05.21 Monday
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新築の木造住宅の生活防音や防音室づくりを段階的に、将来行う場合は、新築時に次の諸点を備えておく必要があります。
・床下、外壁内部の断熱材の種類と厚さ及び密度
・床下地(大引き、梁、下地合板など)の補強
・間取計画による騒音のリスク軽減
・24時間換気の防音フード、天井裏ダクトなど配管計画の調整
以上の内容を新築段階でクリアしていれば、リフォームで改善できます。逆に言えば、上記の諸点に問題があると防音施工に大きな制約となり、工事費用がかさみます。
とくにツーバイフォー住宅の場合は、根本的な改造は新築保証の関係で無理ですので、内装部分だけで解決することになり、その分、部屋が狭くなります。
*在来木造工法の場合は、基本的に改修+防音工事は可能です。軸組補強も後付けできます。
いずれにせよ、新築の段階で出来る限り配慮しておけば、生活防音も防音室もコンパクトに施工できます。
その分、工費を節約できるうえ、部屋も余り狭くなりません。
防音対策とは特別なものではなく、基本的な事項を遵守すれば木造の場合は、なんとかなります。
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